夜逃げを捕まえたら人がドンドン集まる会社になった話
もう人はいらん、頼むからもう来ないでくれ!
すべては、一人の夜逃げから始まった。
今から2年半ほど前のこと
うちのアパートに、一人の若者が入居することになった。
身長180センチオーバー。
体重100キロオーバー。
見た目はスラムダンクの桜木花道にメガネをかけて、前歯がない男。
ここでは「花道」と呼ぶことにする。イメージはこんな感じ
保証会社は3社審査をかけたが全滅。
普通なら断る案件だ。だが当時のワイは違った。
「空き部屋で放置して結局お金はもらえない。少しでも家賃をもらえるなら入れるのが正義だ!」
そんな勢いだけで経営していた。
今なら分かる。歯を見れば分かる。
滞納する人は、だいたい歯が無かったり、黒い
大家レベルが上がると、信用情報より先に歯を見る。
そんな花道だったが、最初の1か月はちゃんと家賃を払った。
しかし問題は別にあった。
近隣からのクレームが止まらない。
何度も部屋へ足を運んだ。
部屋の周りには車の部品、バイクの部品、スプレー缶。たくさんの物が散乱していた。
本人は綺麗だと思っているらしいが、一般人から見ると完全にアウトだった。
動かないバイクを買ってきては直す。
直したら乗る。
壊れたらまた買う。
そんな生活を繰り返していた。
そして3か月後。
家賃が振り込まれなかった。
「おい、滞納してるぞ。」
すると花道は頭をかきながら言った。
「仕事クビになったんで、ちょっと待ってください。彼女が一旦立て替えてもらって払うんで。」
数日後。
本当に振り込まれた。
下記画像は彼女とのショートメッセージです。
それからも払ったり払わなかったり。
毎週のように様子を見に行った。
そして滞納3か月。
ついに伝えた。「払えないなら出て行ってくれ。」
数週間後。
部屋の中は空っぽになっていた。
完璧な夜逃げだった。
ただ、不思議と腹は立たなかった。
荷物も残していない。
ゴミもない。
むしろ次の入居者をすぐ入れられる。
大家目線で言えば優秀な夜逃げだった。
それから〜〜〜〜〜半年後〜〜〜〜〜〜〜〜
ワイはリサイクルショップを運営している中国人から2トントラックを買った。
バックモニターを付けたかったが、車は全然分からない。
面倒だなぁ。
花道がいたらやってもらえたのになぁ。
そんなことを考えていた。
するとバックモニターを付けようと中国人経営のリサイクルショップで――
花道と再会した。
「あれ?」
「えっ?」
お互い固まる。
そしてワイは笑った。
「よーお!ちょうど探してたんだよ!」
花道は苦笑いした。
「勘弁してくださいよ。金ないんですよ。」
「いや金はいいよ。」
「え?」
「綺麗に夜逃げしてくれてありがとう。」
花道は意味が分からない顔をした。
「金払うからバックモニター付けてくれ。」
そこからだった。
バックモニターを付けてもらいながら、車のこと、トラックのことを色々教わった。
話しているうちに聞いてみた。
「将来何やりたいの?」
花道は言った。
「片付けですかね。ゴミ片付けて、お宝もらって、お金ももらえたら最高じゃないですか。」
ワイは笑った。
「それ、うちよくやるぞ。」
数日後。
試しに買った物件の残置物撤去を2tを貸して頼んでみた。
すると花道は親父さんとお母さんまで連れてきた。
家族3人で楽しそうに片付けている。
なんだこの一家。
見ているこっちまで笑ってしまう。
そこから流れが変わった。
3物件ほど残置物撤去を依頼して完遂。
面白そうなので、最初は無料で車が10台以上置けて倉庫付きの戸建てを貸した。
※現在は人数が多いので、2万円。
花道の周りには人が集まる。
車好き。
バイク好き。
改造好き。
仲間好き。
夜逃げ界隈。
気付けば花道は集まりでワイの会社の話をしていた。
「夜逃げして捕まって、そこで働いているけど1年以上そこで働いてて楽しい」と。
そんな話をしていたらしい。
花道がそんなこと言う会社はどんなところだろうと
すると一人来る。また一人来る。さらに一人来る。
夜逃げ界隈から人がどんどん集まってくる。
気付けば10人以上でシェアする家になっていた。
うちもスポットで人が欲しいので、人を誘えば誰かしら来る。
くまっちにとっても都合の良い仕組みが出来上がってしまった。
思い返せば不思議だ。
滞納して。
夜逃げして。
普通なら縁が切れる。
一人の夜逃げ犯から始まった物語は、気付けば人が集まる会社へと変わっていたのである。







